この記事の要約はこちら
・厚生年金の保険料が高いと感じ、「払いたくない」と思う背景には手取り減少や将来への不安がある
・厚生年金の保険料納付は法律で義務付けられており、会社員は給与天引きで原則回避できない
・未納を続けると年金額の減少や受給資格喪失、延滞金や差し押さえのリスクがある
・厚生年金には老後だけでなく、障害年金や遺族年金など万一に備える保障のメリットがある
・払えない場合は免除・猶予制度や社会保険料控除を活用し、未納のまま放置しないことが重要
毎月の給与明細を見て、「厚生年金の天引き額が多すぎる」「この負担、本当に意味があるのだろうか」と感じたことはありませんか。
社会保険料の負担が重く、生活を圧迫していると感じるほど、「できれば払いたくない」「支払わない方法はないのか」と考えてしまうのも無理はありません。
一方で、将来どれくらい年金を受け取れるのかが分かりにくく、「このまま払い続けて本当に元が取れるのか」「老後のためになっているのか」と不安を抱いている人も多いでしょう。
本記事では、「厚生年金を払いたくない」と感じる理由を整理したうえで、支払わない選択肢はあるのか、未納によるリスクは何か、そのほか支払いに疑問を感じたときに知っておくべき現実的な対処策をわかりやすく解説します。
この記事の目次
公的年金(厚生年金)の保険料を払いたくないと感じるのはなぜ?
厚生年金の保険料を「負担に感じる」「払いたくない」と感じる人が少なくありません。
特に給料から毎月高額な天引きをされると、生活が苦しくなり、「本当にこれだけ払う価値があるのか」と疑問を抱いてしまうのも当然です。
とくに、若い世代は老後の受給額がどれほどになるのかイメージしにくく、目の前の生活費や趣味に使いたいと思う方も多いでしょう。
また、税金や社会保険を合わせると手取りが大きく減ってしまうことへの抵抗感や、「少子高齢化で将来年金がもらえないのではないか」と不安を持つ人もいます。
「払いたくない」という気持ちには、このような将来への不透明感が大きく影響しています。
実際のデータでも、年金制度への参加や保険料の納付が完全ではない現状が見受けられます。
厚生労働省「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、義務づけられている第1号被保険者の最終納付率(過去に遡って納付可能な部分を含めた割合)は約84.5%と高い水準にはあるものの、100%ではなく未納者も一定数存在します。
また、全体の未納者数は減少傾向にあるものの、依然として多くの人が納付に至っていません。
さらに、厚生年金保険被保険者(会社員など)は高い収納率(ほぼ99%)であるものの、制度全体で見ると未納が完全になくなっているわけではありません。
一方、厚生労働省や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的機関は、将来にわたって年金制度が破綻しないよう、給付と負担のバランスを見ながら年金積立金の運用や制度改正を進めています。
年金を「払いたくない」と感じる気持ちは誰にでも起こり得ますが、単に不満だけで判断してしまうと、将来受け取れる年金や保障を失ってしまう可能性もあるでしょう。
参考:厚生労働省「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」
公的年金(厚生年金)の保険料納付は義務
公的年金は、日本の社会保障制度の一つで、原則としてすべての国民が加入する仕組みになっています。
自分が支払った保険料がそのまま将来の自分に戻ってくる制度ではなく、現役世代が今の受給者を支え、将来は次の世代に支えられる形で成り立っています。
このように、公的年金は社会全体で支え合う制度であるため、年金の保険料は法律によって納付が義務付けられています。
会社員だけでなく、自営業者やフリーランスも含め、立場に関係なく加入と納付が前提です。
なお、収入が少ないなどの理由で納付が難しい場合には、免除や猶予といった制度が用意されているため、正しい手続きを行うことで、将来の年金への影響を抑えることができます。
義務のため、基本的には給与天引きで支払わざるを得ない
会社員や公務員の場合、厚生年金の保険料は給与から自動的に天引きされます。
本人が「払いたくない」と思っても、給与が支払われる以上、保険料が差し引かれる仕組みになっています。
そのため、意識的に未納を続けることは現実的ではありません。
手取りが減っていると感じやすい一方、納付を続けることで老後の年金だけでなく、障害を負ったときの保障なども確保できます。
つまり、厚生年金は任意で選ぶ制度ではなく、働いて収入を得る以上、原則として加入し、保険料を支払う前提で設計されている制度なのです。
公的年金(厚生年金)の保険料を払わないとどうなる?
厚生年金の保険料を払わずにいると、将来のお金や保障にさまざまな影響が出ます。
ここでは、保険料を払わなかった場合に起こり得る代表的なリスクを確認していきましょう。
・老齢年金の受給額が減る
・老齢年金・遺族年金・障害年金を受け取れなくなる
・延滞金の支払いが必要になる
・財産を差し押さえられる
老齢年金の受給額が減る
厚生年金の保険料は、将来受け取る老齢年金の金額に直接影響するため、未納期間があると、その分だけ年金額は少なくなります。
老後の生活費を年金に頼る割合が高い人ほど、受給額の減少は家計に大きな影響を与え、結果として、老後も働き続けなければならなくなるケースもあるでしょう。
将来の生活を安定させるためには、できるだけ未納期間を作らないことが重要です。
老齢年金・遺族年金・障害年金を受け取れなくなる
保険料の未納が一定期間以上続くと、年金そのものを受け取る資格を失う可能性があります。
これは老齢年金だけでなく、遺族年金や障害年金も同様です。
病気や事故、家族の死亡などは、いつ起こるか予測できません。
そうしたときに年金の保障が受けられないと、生活が一気に苦しくなるおそれがあります。
未納を放置すると、自分だけでなく家族の生活にも影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。
延滞金の支払いが必要になる
保険料を長期間納めないままでいると、延滞金が発生する場合があります。
延滞金は後からまとめて請求されることが多く、家計への負担が大きくなりがちです。
支払いが難しいと感じた時点で、免除や猶予制度を利用すれば、延滞金を避けられる場合もあるため、 問題を先延ばしにせず、早めに対応することが大切です。
財産を差し押さえられる
督促や催告を無視し続けると、最終的には強制徴収が行われる可能性があり、 預貯金や給与が差し押さえられることもあるため、生活に大きな支障が出てしまいます。
差し押さえまで進むケースは多くありませんが、未納を放置すればリスクは高まります。
支払いが難しい場合は、そのままにせず、年金事務所へ相談することが重要です。
免除や猶予制度を活用すれば、差し押さえに至る前に状況を改善できる可能性があります。
公的年金(厚生年金)の保険料を支払うメリットは?
厚生年金の保険料は負担に感じやすいものですが、将来の生活や万が一の事態に備えるうえで役立つ面もあります。
ここでは、代表的なメリットを順に確認していきましょう。
・障害時や万一の際に年金を受け取れる
・老後の年金受取額が手厚くなる
・社会保険料控除を受けられる
障害時や万一の際に年金を受け取れる
公的年金の大きな特徴は、老後だけでなく、思いがけないトラブルにも備えられる点です。
たとえば、病気やケガで働けなくなった場合には「障害年金」を受け取れる可能性があります。
令和7年4月分からの制度では、障害等級2級の場合、障害基礎年金だけでも年額831,700円が支給され、子どもがいれば加算もあります。
さらに会社員として厚生年金に加入していれば、これに加えて障害厚生年金(報酬比例)が上乗せされるため、働けなくなったあとも、一定の収入が継続することで生活を支える役割を果たします。
また、万が一、家計を支えていた方が亡くなった場合には「遺族年金」が支給されます。
子どものいる配偶者の場合、遺族基礎年金は年額831,700円+子の加算額があり、さらに厚生年金に加入していれば、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する遺族厚生年金を受け取れます。
老後の年金額だけを見ると実感しにくいかもしれませんが、実際には、老齢年金の目安としても
・厚生年金(夫婦2人の標準的な年金額):月額232,784円
といったように、生活を支える基盤となる金額が想定されています。
このように、公的年金は「老後のための制度」というだけではなく、障害や死亡といった、いつ起こるかわからない事態に対して、本人や家族の生活を守る仕組みとして機能している特徴もあります。
参考
日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
老後の年金受取額が手厚くなる
厚生年金に加入している期間が長いほど、将来受け取れる老齢年金は増えやすくなります。
国民年金だけの場合と比べると、厚生年金は受給額が高くなる傾向があります。
多くのケースでは、年金を受け取り始めてから10年前後で、これまでに支払った保険料の総額に近づくとされています。
その後は、長生きするほど受け取れる総額が増えていく点も特徴です。
老後の生活を安定させるためには、若いうちから継続して加入することが、将来の安心につながります。
社会保険料控除を受けられる
公的年金の保険料は、所得税や住民税を計算する際に社会保険料控除の対象になります。
その分、課税対象となる所得が減り、結果的に税金の負担を軽くできます。
年末調整や確定申告で正しく控除を受けることで、家計全体の負担を抑えることが可能です。
長期間にわたって積み重ねると、節税効果も無視できない金額になります。
保険料の支払いは単なる出費ではなく、税負担を調整しながら将来に備える手段の一つともいえるでしょう。
公的年金(厚生年金)の保険料を払いたくない時はどうする?
公的年金(厚生年金)の保険料をどうしても払えない、または払いたくないと感じる場合、負担を軽くしたり将来の年金を確保したりできる制度があります。
まずはこれらを理解して、自分に合った方法を検討しましょう。
・社会保険料控除を活用する
・国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度を活用する
・学生納付特例制度を利用する
1つ目は、社会保険料控除を活用することです。
厚生年金の保険料は所得税や住民税を計算する際の社会保険料控除の対象になり、その分だけ課税所得が減ります。
年末調整や確定申告で申告することで、税金の負担を軽くでき、結果的に家計全体の負担がやわらぎます。
支払いがどうしても難しい場合、国の制度として用意されているのが国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度です(国民年金の仕組みですが、厚生年金から国民年金に切り替わる状況でも活用できます)。
これらは、収入が一定以下の場合に申請することで保険料の支払い負担を軽くする仕組みです。
たとえば、収入に応じて「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」といった区分があり、承認されればその期間の保険料の支払額が減額またはゼロになります(全額免除の場合は月額0円になります)。
申請は日本年金機構や市区町村窓口で行います。
また、納付猶予制度は、20歳以上50歳未満の方で一定の所得以下の場合に、保険料の納付を先送りできる仕組みです。
猶予された期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれますが、年金額としては反映されないため、将来の年金額を増やしたい場合は追納(後から支払う制度)を利用することもできます。
そのほか、状況に応じて利用できる制度もあります。
たとえば、学生で所得が低い人は学生納付特例制度を利用して納付を猶予できる場合もあります。
これらの制度を利用すれば、ただ未納にするよりも将来の年金を確保しやすくなり、延滞金や差し押さえといったリスクを避けることができます。
支払いが難しいと感じたら、一度年金事務所や市区町村窓口で自分の状況を相談し、どの制度を使えるか確認するのが重要です。
参考
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
公益財団法人生命保険文化センター 国民年金保険料を納められないときはどうすればいい?
まとめ
ここまで、公的年金(厚生年金)の保険料を払いたくないと感じる背景や、払わないリスク、そしてメリットや対処策を紹介しました。
厚生年金の保険料は社会全体が支え合うための仕組みであり、負担感がある一方で、老後・障害・遺族に対する幅広い保障が受けられる大切な制度です。
未納を続けると将来的に年金が減るだけでなく、受給資格自体が失われる可能性があるなど、リスクが非常に大きいことを理解しておきましょう。
払えない状況に陥ったときは、免除・猶予制度をはじめとした対策を早めに講じることが大切です。
制度を利用して将来の不安を減らし、納付にかかるコストも節税効果などを活かして少しでも軽減していくことが現実的な選択となるはずです。
公的年金は長期にわたるライフプランを支える重要な制度です。
メリットとデメリットの両方を正しく理解し、自分や家族の将来を見据えた判断をすることで、安心して老後を迎えられるようにしていきましょう。
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